第85回 日本温泉気候物理医学会学術集会の紹介ページです。学会活動コラムを掲載しています。

 

更新日:2021.02.4

第85回 日本温泉気候物理医学会学術集会

新型コロナの影響で5月から延期になっていた第85回 日本温泉気候物理医学会抗学会総会が2021年1月29-31日、WEB開催となり、温泉療法医でもある成井諒子医師と研究開発担当の奴久妻智代子が発表しました。

演題:全身温熱療法による末梢血中キラーT細胞の変化

昨年は『重炭酸泉による家庭入浴の継続が冷えを解消する』というテーマで重炭酸泉の冷え症改善効果について発表しましたが、今年は温浴の免疫効果に焦点を当てました。
温浴が免疫を賦活することは古くから知られていますが、マイルドな全身温熱療法の範囲内では、平熱からの体温上昇が高ければ高いほど末梢血中のリンパ球が増える傾向にあり、さらにリンパ球の増加率が高ければ高いほど、免疫チェックポイント分子発現のない非疲弊キラーT細胞が増える、というのが今回得られた知見です。

恒温動物であるヒトの深部体温は、37℃を保つための様々な機構で守られており、簡単には上昇しないようにできていますが、医療機関で提供する全身温熱療法は、患者さんの体の恒常性を破綻させない可逆範囲の上限まで体温を上昇させ、その発熱状態が平熱に戻る過程で、体温以外の生体パラメータの偏りを同時に正し、全身の連携を強化する役目があると考えられています。
免疫機能に対する全身温熱療法の特徴として、免疫が暴走しているケースでは制御系のリンパ球の割合を増やしてこれを鎮静化する一方、免疫が抑制されているケースでは抑制に関わる分子の発現を抑えてブレーキ解除に繋げる方向に作用するという、一見矛盾する両方向の働きがありますが、これは発熱の基本作用である“偏りを正して連携を強化する”ことに他なりません。

今回の学術集会のテーマは『温泉・気候・物療とスポーツを科学する』

古代から経験的に受け継がれてきた伝統的な療法を、新たな視点で科学的に分析し、根拠に基づいた治療法を樹立する試みが盛んな昨今、コロナ禍で体温と免疫の重要性が見直され、逼迫した医療機関の負担を軽くするためにも個人でできることはないかと考えた時、温泉気候物理医学の役割はきわめて大きいといえます。