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更新日:2020.10.9

2型糖尿病におけるヒートショックプロテイン70(HSP70)の役割

新型コロナウイルス感染症の重症化リスクにもなっている糖尿病について、温熱も深く関わる熱ショックタンパク質(ヒートショックプロテイン:HSP)がその治療や予防に有効であることが示唆されるレビューをご紹介いたします。

シャペロンを基盤とした治療標的の技術革新: 2型糖尿病のためのヒートショックプロテイン70

Chaperone-Based Therapeutic Target Innovation:
Heat Shock Protein 70 (HSP70) for Type 2 Diabetes Mellitus.

Diabetes Metab Syndr Obes. 2020 Feb 27;13:559-568. doi: 10.2147/DMSO.S232133.
Mulyani WRW et al. (PMID: 32161482)

<要旨>

2型糖尿病は今なお健康における世界的な問題となっている。現在の2型糖尿病の治療は症状に対して行うことに限定されており、インスリン抵抗性を示す組織のインスリン感受性を回復させることはできていない。

過去10年間に、2型糖尿病につながるインスリン抵抗性の病態形成において、シャペロンファミリーであるヒートショックプロテイン70(HSP70)が重要な役割を果たしていることが(いくつかの研究で)示された。

HSP70は、タンパク質の折り畳みと分解に機能する細胞保護分子シャペロンである。一般的に、HSP70濃度の低下は、*JNKの活性化による炎症過程の誘導、ミトコンドリアのマイトファジーの減少とミトコンドリア新生を介したミトコンドリアによる脂肪酸酸化の抑制、小胞体ストレスにおける**SREBP-1c活性化を可能にすることが示されている。
(上記の)全体的な分子経路はインスリン抵抗性や2型糖尿病につながる可能性がある。一方で、脳組織におけるHSP70の発現増加は、インスリン感受性と血糖コントロールを特異的に改善することができる。

インスリン抵抗性を有する被験者におけるHSP70の調節を標的とした治療戦略(長期的な身体運動、温浴療法(hot tub therapy;#HTT)、アルファルファ植物由来のHSP70(aHSP70)の投与)は、2型糖尿病の管理において有望な治療的および予防的効力を有する可能性を秘めている。

シャペロン:他の蛋白質分子が正しい折りたたみ構造を形成して機能を獲得するのを助けるタンパク質の総称
ミトコンドリアのマイトファジー:機能不全を起こした不良ミトコンドリアを自食作用で分解する機能

*JNK (Jun-N末端キナーゼ)は、MAP キナーゼファミリーに属するタンパク質リン酸化酵素で、そのシグナル伝達経路は,細胞外からの様々なストレス刺激や発生プログラムなどの内因性シグナルを細胞核へ的確に伝達するための主要なシステムの1つである。
**SREBP-1cは肝臓において脂肪酸、トリグリセリドの合成を支配する転写因子である。インスリン抵抗性モデル動物において、肝臓のSREBP-1cの活性化が報告されている。
#HTT法は激しい運動を必要としないため、運動が困難な2型糖尿病患者にお勧めの方法の一つである。(本文参照)