ウイルスを味方に~腫瘍溶解性ウイルス~の紹介ページです。スタッフコラムを掲載しています。

 

更新日:2020.04.7

ウイルスを味方に~腫瘍溶解性ウイルス~

人が感染症騒ぎでいつもと全く違う春を戦々恐々と過ごしている今年
桜はいつも通りの優しい色を咲かせ
テレワークもままならない真面目な日本人を
仕事の行き返りに和ませてくれます。

今回の騒ぎでウイルスは
とても恐ろしい病原体という印象を植え付けてしまいましたが
そんな中で
治療薬として人間を救わんとするウイルスもいます。

例えば、シンドビスウイルスという
日本ではあまり聞き馴染みのないウイルスがいます。

このシンドビスウイルスは
蚊によって媒介されるアルボウイルスの仲間である一方
がん細胞選択的に感染・増殖し
がん細胞をアポトーシスに導く
腫瘍溶解性ウイルス(Oncolytic virus)の仲間でもあります。

がん細胞が正常細胞に比べて熱に弱いことは
古くから知られていましたが
ウイルス感染に対してもがん細胞は正常細胞より弱く
アメリカでも60年以上前からウイルスをがん治療に使う試みは研究されてきました。

ウイルス治療は
ウイルスの増殖によってがん細胞を直接的に壊すのに加え
ウイルスという異物によって免疫細胞を活性化させるという点で
熱によってがん細胞を弱らせ
温熱作用で免疫細胞を活性化させる温熱療法とも共通点があります。

その昔発熱レベルをコントロールするのが難しかったのと同様
当時はウイルスの病原性をコントロールするのが難しく
実際の治療にはなかなか結び付きませんでしたが
現在はウイルスの遺伝子改変が容易に行えるようになり
ヘルペスウイルスやアデノウイルスを使った研究も報告されています※1,2。

※1 Esaki S et al., Oncolytic activity of HF10 in head and neck squamous cell carcinomas. Cancer Gene Ther. 2019 Sep 3.
※2 Watanabe Y et al., Enhancement antitumor efficacy of telomerase-selective oncolytic adenovirus with valproic acid against human cancer cell. Cancer Gene Ther. 19, p767-772, 2012.

使い方によってはウイルスも人の味方になることがあります。

とはいえ
人と違う遺伝子を持った非細胞性生物であるウイルス
ウイルスとの共生の道を探るにはまだ時間がかかりそうです。