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更新日:2020.03.7

新興・再興ウイルス感染症と免疫

医療機関における温熱療法は、免疫制御の観点からがんのサポート医療として扱われることが多いですが(※1)、がん細胞に対する免疫作用のメカニズムはウイルス感染細胞に対するメカニズムと同様であり、ある種のウイルス感染症の予防や持続感染の再増殖予防に温熱療法がプラスの作用をもたらすことも昔からよく知られていました(※2,3)。

※1 Yatvin MB et al. Shedding light on the use of heat to treat HIV infections. Oncology Vol. 50, p380-389.1993
※2 Hatanaka M. Immune Activation by Hyperthermia : Treatment and Prevention of HTLV-1 Related Diseases. Jpn. J. Hyperthermic Oncol., Vol. 18, No. 4, p181-189. 2002
※3 Baronzio G et al. Hyperthermia and Immunity. A brief overview. In Vivo Vol. 20, p689-695. 2006

生まれてから大人になるまでに、私たちは様々な種類のウイルスに暴露されています。風邪の原因の多くがライノウイルスやアデノウイルスのようなウイルスで、そんな中にコロナウイルスの仲間もありました。一昔前までコロナといえば、猫やマウスでは重篤な症状を示すことがあるものの、ヒトではたいして熱も上がらない鼻風邪を起こすくらいのイメージしかありませんでした。
コロナウイルス感染がヒトでも場合によっては重篤な感染症になり得ることを認知したのは、2002年、中国を中心としたSARSの流行からです。
2012年には中東でMERSの流行も起こり、そして今回の新型コロナウイルス感染症によって日本でもコロナの名前がその実体とともに広がる結果となりました。

今回のようにこれまでなかったタイプの病原体によって流行が起こり、新たに認知されるようになった感染症を新興感染症と呼んでいます。また、2014年に日本で発生があったデング熱のように、過去には流行があったものの最近は抑えらていた病原体が再び流行を起こすようになったものを再興感染症と呼びますが、これらの新興・再興感染症がこのところ目立ちます。

その原因を社会的背景や地球の気候変動に求めるコメントも多くありますが、世の中に一気に蔓延してヒトを含む生物に影響を与える病原体が活性化する時代というのは、歴史的にみても繰り返されており、現代に暮らす私たちは過去に猛威を振るったウイルスに打ち勝った遺伝子を持った種、ということにもなるわけです。

過去の状況と現代の状況が少し違うのは、現在は科学の進歩のおかげで新興感染症といえどもその原因が比較的すぐに同定可能で比較的すぐに検査体制が確立し、同定された病原体に特異的な受容体や侵入様式、増殖環等も比較的すぐに判明し、そのうちワクチンや治療薬の開発を進めることもできるという点です。

一方、科学の恩恵とは裏腹に現在の方がむしろ感染しやすくなっているのではと思わせる要因は、現代人の免疫機能のかたよりにあるかもしれません。ワクチンや抗生剤の開発によって感染症で命を落とす人は過去と比べて格段に減りましたが、自分で病原体を排除しようとする白血球の連携や攻撃力やそれをタイミングよく終息させる調整力がうまく働かないケースが散見されます。
特にウイルスは生物間を渡り歩いているうちに変異を起こしやすくなり、ワクチンも抗ウイルス薬も後手後手に回るリスクがありますので、最終的には免疫による排除が不可欠になるわけですが、その免疫が疲弊していたり、コントロールできなかったりしているケースでは、最後の踏ん張りがきかず、ウイルス増殖を許してしまいがちです。

免疫による防御機構を最初のバリアとし、あるいは最後の踏ん張りとするためにできることは、対症療法の薬を上手に使いながら、良質な睡眠を確保し、栄養状態をコンロトールし、体温を維持し、血流を低下させない、という当たり前のことを積み重ねる、その日々の努力に尽きるようです。


クレジット:emmanmaさんによる写真ACからの写真