対象となる患者様(乳がん)の紹介ページです。乳がんの基礎知識(原因、分類、症状、検査方法、ステージ、治療方法)や温熱療法の活かし方を掲載しています。

 

乳がんの患者様

最近の研究で体内細胞数は約37兆2000億個(以前は60兆個)と言われています。その天文学的数の細胞は、常に磨耗または破壊されています。身体は消耗、衰弱している細胞が死んでいく前にその機能を補完するため、その細胞のコピーを産生しようとします。この過程で遺伝子の転写エラーや体内の環境や有害物質のために正常細胞分裂過程において、毎日数万回もの間違いを引き起こしています。これらの間違いの大部分は訂正されますが、間違った遺伝情報で新しい細胞が作られ、時には、細胞の生育能力を阻害するのではなく、新たに作られた細胞が無秩序に増殖することを可能にする間違いがあると、その細胞は正常な細胞増殖を制御するチェックおよびバランスが乱れ、異常分裂を開始し、がん細胞を産生します。これが起こると、がん細胞が増殖し、がん性または悪性腫瘍を発生させる可能性が高くなります。
乳がんは、乳房の細胞が制御不能になることで始まります。これらの異常細胞は通常、腫瘍を形成し、X線によるマンモグラフィーで発見されることもあれば、しこりとして自分で気づくこともあります。 乳房のしこりのほとんどはがんではなく、良性腫瘍であることが多く、異常な増殖はしますが乳房の周囲には広がらず、生命を脅かすことはありません。しかし、良性腫瘍のあるものは、乳がんを発症させるリスクを高める可能性があります。乳房にしこりや種々の変化があった場合には、それが良性か悪性のがんか、そしてそれが将来のがんリスクに影響を与えるかどうかを診断するために専門病院による検査が必要です。

乳がんの種類

大部分の乳がんは、乳管から始まる乳管がんですが、母乳を作る乳腺で始まる小葉がんもあります。それ以外にも少数ながら特殊なタイプの乳がんもあります。
また、乳房内の組織から始まる腫瘍としてる肉腫やリンパ腫もみられますが、これらは乳がんとは区別されています。乳がんの多くのタイプでしこりを形成しますが、すべてがそうではありません。
浸潤がんは、がん細胞が周囲の組織に増殖(浸潤)したり、乳房から離れた体の部位に広がる(転移する)腫瘍は、悪性腫瘍(がん)です。乳がんの発生はそのほとんどが女性ですが、男性でも乳がんになる可能性はあります。
浸潤がんは、さらにいくつかの異なる性質のグループに分類されることが遺伝子検査により判明してきました。実際にはホルモン受容体、HER2、核/組織グレードや癌細胞の増殖性の指標であるa"Ki-67index"という検査などにより分類します。この分類によって予後や治療による反応が異なると考えられています。

乳がんになる原因・リスク要因

遺伝的要因

性別

乳がんは、男性よりも女性で約100倍多く発生します。

年齢

侵襲性がんの場合、女性の3人中2人が55歳以降に診断される。

人種

乳がんは白人女性でより頻繁に診断されます。

家族歴および遺伝要因

母親、姉妹、父親または子供が乳がん、または卵巣がんと診断されている場合、将来的に乳がんと診断されるリスクが高くなります。親戚の中で50歳以前に乳がんと診断された人がいる場合、リスクは増加します。

個人の健康歴

左右どちらかの乳房で乳がんと診断された場合、将来もう一方の乳房で乳がんと診断されるリスクが高くなります。また、異常な乳房細胞が以前に検出された場合(異常肥大、小葉がんまたは乳管がんなど)、リスクが増加します。

月経および出産歴

早い初経(12歳以前)、遅い閉経(55歳以降)、初産年齢が高い、または出産していないこともまた、乳がんリスクを高める可能性があります。

特定のゲノムの変異

BRCA1やBRCA2などの特定の遺伝子の突然変異は、乳がんのリスクを高める可能性があります。これは遺伝子検査によって診断され、乳がんの家族歴がある場合には考慮することもあります。

乳腺密度が高い

B乳腺密度が高い方はマンモグラフィ検査(X線)時、がん同様に乳腺が白く写るため、腫瘍が早い段階で検出されにくく、リスクが高まります。

環境およびライフスタイルのリスク要因

運動不足

運動がほとんどない座り仕事などの生活習慣は、乳がんのリスクを高める可能性があります。

食生活

飽和脂肪(ラードやバターなど、肉類の脂肪や乳製品など)が多く、果物や野菜が不足している食事は、乳がんリスクを高める可能性があります。

肥満

体重超過または肥満は、乳がんのリスクを高めることがあります。閉経後の体重増加でリスクはさらに増加します。

飲酒

アルコールを頻繁に摂取すると、乳がんのリスクが上昇する可能性があります。消費するアルコールが多いほど、リスクは高くなります。

胸部への放射線

30歳までに胸部に医療レベルの放射線療法を施すことで、乳がんのリスクが上昇する可能性があります。

ホルモン補充療法(HRT)

閉経後の女性ホルモン補充療法により乳がんのリスクが上昇します。

症状

検診で見つかるケースの他に、自分でも以下の症状に気づく場合があります。

1)乳房のしこり

乳がんが進行すると腫瘍が大きくなり、注意深く触るとしこりがわかるようになります。ただし、しこりがあるからといって、すべてが乳がんというわけではありません。例えば、乳腺症、線維腺腫、葉状腫瘍などでもしこりの症状があらわれます。葉状腫瘍はまれな腫瘍ですが、線維腺腫に似た良性のものから、再発や転移を起こしやすい悪性のものまでさまざまです。これらは乳がんとは異なりますが、しこりが気になる場合は専門医に診てもらいましょう。

2)乳房のエクボなど皮膚の変化

乳がんが乳房の皮膚の近くに達すると、エクボのようなひきつれができたり、乳頭や乳輪部分に湿疹(しっしん)やただれができたり、時にはオレンジの皮のように皮膚がむくんだように赤くなったりします。乳頭の先から血の混じった分泌液が出ることもあります。

乳房のしこりがはっきりせず、乳房の皮膚が赤く、痛みや熱をもつ乳がんを「炎症性乳がん」と呼びます。炎症性乳がんのこのような特徴は、がん細胞が皮膚に近いリンパ管の中で増殖してリンパ管に炎症を引き起こしているためです。

痛み、むくみや腫れといった症状は乳がん以外の病気、例えば良性腫瘍の1つである線維腺腫(せんいせんしゅ)、乳腺症、細菌感染が原因の乳腺炎や蜂窩織炎(ほうかしきえん)などでも起こることがあるので、詳しい検査をして乳がんであるかどうか調べる必要があります。

3)乳房周辺のリンパ節の腫れ

乳がんは乳房の近くにあるリンパ節である、わきの下のリンパ節(腋窩[えきか]リンパ節)や胸の前方中央を縦に構成する胸骨のそばのリンパ節(内胸リンパ節)や鎖骨上のリンパ節に転移しやすく、これらのリンパ節を乳がんの「領域リンパ節」と呼びます。腋窩リンパ節が大きくなると、わきの下などにしこりができたり、リンパ液の流れがせき止められてしまうため、腕がむくんできたり、腕に向かう神経を圧迫して腕がしびれたりすることがあります。
腋窩リンパ節はレベルI、II、IIIのグループに分けられます。
レベルI:小胸筋外縁より外側のリンパ節
レベルII:小胸筋の後ろまたは大胸筋と小胸筋の間のリンパ節
レベルIII:鎖骨下の小胸筋内縁より内側のリンパ節

リンパ節転移は一般にレベルIからレベルII、さらにレベルIIIへ進むとされています。手術前の触診や画像診断、またセンチネルリンパ節生検で臨床的に明らかな腋窩リンパ節転移を認めた場合は、レベルIIまでの切除が標準とされています。

乳がんは、がん細胞が血管やリンパ節に入り、身体の他の部分に運ばれると広がります。
リンパ節をつなぐリンパ管はリンパ液を運びます。リンパ液というのは、毛細血管からにじみ出た無色または薄い黄色の透明な組織液のことで、古くなった細胞や水分、腸管で吸収された脂肪などの老廃物を運ぶ排泄運搬機能、そしてリンパ液には、体の外から侵入したウイルスや細菌を撃退してくれる免疫機能を司るリンパ球を含んでいます。

乳がん細胞はリンパ管に入り、リンパ節で増殖し始めます。
乳房のリンパ管の大部分は、
・腋窩リンパ節(腋窩節)
・襟骨周囲のリンパ節(鎖骨上および鎖骨下リンパ節)
・胸骨の近くの胸部のリンパ節(内部乳房リンパ節)

がん細胞がリンパ節に広がっていると、細胞がリンパ管を通過して体の他の部分に転移(転移)する可能性が高くなります。
乳がん細胞が増殖したリンパ節が多くなればなるほど、他の臓器にもがんが見つかる可能性が高くなります。このため、1つまたは複数のリンパ節でがんが発見されると、治療計画に影響を及ぼすことがよくあります。
通常、がんが拡がっているかどうかを検査するには、1つ以上のリンパ節を取り除く手術が必要です。
しかし、リンパ節にがん細胞を持つ女性のすべてが転移を起こすわけではなく、リンパ節にがん細胞がなく、後に転移を起こす女性もいます。

4)遠隔転移の症状

転移した臓器によって症状はさまざまであり、症状がまったくないこともあります。領域リンパ節以外のリンパ節が腫れている場合は、遠隔リンパ節転移といい、他臓器への転移と同様に扱われます。腰、背中、肩の痛みなどが持続する場合は骨転移が疑われ、負荷がかかる部位に骨転移がある場合には骨折を起こす危険があります(病的骨折)。肺転移の場合は咳(せき)が出たり、息が苦しくなったりすることがあります。肝臓の転移は症状が出にくいですが、肝臓が大きくなると腹部が張ったり、食欲がなくなったりすることもあります。また、痛みや黄疸(おうだん)が出ることもあります。

検査方法

自己診断のチェックポイント

  • 乳房の変形や左右差がないか
  • 乳頭から出血や異常な分泌物がないか
  • えくぼのような凹みがないか
  • ひきつれがないか
  • ただれがないか
  • しこりがないか

病院での検査

視診・触診
マンモグラフィー検査(乳房X線検査)

マンモグラフィーとは乳房専用のレントゲン検査で、圧迫板で乳房をはさみ、薄く引き延ばして撮影します。
メリット:乳房全体の状態を把握できます。0.1~0.5㎜の微細石灰化の検出が可能です。
デメリット:乳腺密度(乳腺発達)の濃い場合は検出が困難です。X線による被爆リスクがあります。

超音波検査

超音波検査とは超音波を出す「プローブ」と呼ばれるセンサーをあて、はねかえってくる音波を画像化して、乳房内部の様子を映し出します。
メリット:乳腺と乳がんのしこりの判別が容易にできます。
デメリット:得られるのは乳房の部分的な情報で、微細石灰化の検出は困難です。

CT検査(X線断層撮影)

X線による検査です。
メリット:マンモグラフィでのX線撮影は画像が重なっているのに対し、CTでは輪切りの断面図を撮影できるので、乳がんの正確な位置を調べることができます。
デメリット:X線による被爆リスクがあります。

MRI検査(磁気共鳴装置)

強い磁場の装置の中で電波を当て、それに対して人体から放出されるNMR信号(水素原子核の磁気共鳴現象)をもとに画像にして調べる方法です。
メリット:乳がんの良性・悪性の区別や広がりを調べることができます。
デメリット:体内に金属や心臓ペースメーカーが入っている方、タトゥーがある方は受けることが出来ません。化粧品にも金属が含まれるので、検査前にメイクを落とします。また、狭い室内での検査になるため、閉所恐怖症の方も検査が不適応となります。

骨シンチグラフィ

放射性同位元素(ラジオアイソトープ)を使った核医学検査の1つです。
メリット:がんの骨への転移の有無を検査します。
デメリット:がんの骨への転移の有無を検査します。

PET-CT

病巣の部位や広がりを調べるPET(陽電子放射断層撮影)と、病巣の場所を示すCT(X線断層撮影)の融合画像を表示できる検査です。
メリット:これまで診断が難しかった胸骨傍リンパ節や鎖骨上リンパ節など、腋窩以外のリンパ節への転移や、骨や肺などへの遠隔転移、甲状腺がんや対側がんといった潜在がんの検出に有効であるとの報告もあります。
デメリット:PETの空間分解性能では、微小ガンや微小転移の診断能力に限界があります。

マンモトーム

乳房内のごく小さな石灰化あるいは小さなしこりに対して乳房組織を採取(生検)します。乳房専用のX線装置を使用し、コンピュータ制御下で行うステレオガイド下マンモトーム生検と、超音波装置を使用して行うエコーガイド下マンモトーム生検があります。

血液検査(腫瘍マーカー)

腫瘍マーカーとは,がん細胞がつくる物質,または,がん細胞に反応して正常細胞がつくる物質のことで,血液や体液などの中に含まれています。血液を検査して,その物質がどのくらい存在するかをみて,体内にがんがあるかどうかを推測したり,治療の効果が出ているかどうかを判断したりします。乳がんでは一般的にCA15-3、BCA225、NCC-ST-439、CEAなどを調べます。再発乳がんではKL-6もがんの進み具合の指標となります。
メリット:腫瘍マーカーとは,がん細胞がつくる物質,または,がん細胞に反応して正常細胞がつくる物質のことで,血液や体液などの中に含まれています。血液を検査して,その物質がどのくらい存在するかをみて,体内にがんがあるかどうかを推測したり,治療の効果が出ているかどうかを判断したりします。乳がんでは一般的にCA15-3、BCA225、NCC-ST-439、CEAなどを調べます。再発乳がんではKL-6もがんの進み具合の指標となります。
デメリット:腫瘍マーカーは早期の乳がんで上昇することは少なく,乳がん検診としての目的にはあまり役に立ちません。また、進行しても腫瘍マーカーの上昇がみられないケースもあります。

ステージ別の進行状態

0期 非浸潤がんといわれる乳管内にとどまっているがん、または乳頭部に発症するパジェット病(皮膚にできるがんの一種)で、極めて早期の乳がん
標準治療方法:手術
Ⅰ期 しこりの大きさが2cm 以下で、リンパ節や別の臓器には転移していない
標準治療方法:手術・放射線
Ⅱ期 IIA
しこりの大きさが2cm 以下で、わきの下のリンパ節に転移があり、そのリンパ節は周囲の組織に固定されず可動性がある。または、しこりの大きさが2 ~ 5cm で、リンパ節や別の臓器への転移がない。
IIB
しこりの大きさが2 ~ 5cm で、わきの下のリンパ節に転移があり、そのリンパ節は周囲の組織に固定されずに可動性がある。または、しこりの大きさが5cm を超えるが、リンパ節や別の臓器への転移がない。
標準治療方法:手術・放射線・化学療法(抗がん剤)・ホルモン療法
Ⅲ期 IIIA
しこりの大きさが5cm 以下で、わきの下のリンパ節に転移があり、そのリンパ節は周辺の組織に固定されている状態、またはリンパ節が互いに癒着している状態、またはわきの下のリンパ節転移がなく胸骨の内側のリンパ節に転移がある。あるいは、しこりの大きさが5cm 以上で、わきの下または胸骨の内側のリンパ節への転移がある。
ⅢB
しこりの大きさやリンパ節への転移の有無に関わらず、皮膚にしこりが顔を出したり、崩れたり、むくんでいるような状態。炎症性乳がんもこの病期から含まれる。
ⅢC
しこりの大きさに関わらず、わきの下のリンパ節と胸骨の内側のリンパ節の両方に転移のある、または鎖骨の上下にあるリンパ節に転移がある。
標準治療方法:放射線・化学療法(抗がん剤)・免疫療法
Ⅳ期 別の臓器に転移している。
乳がんの転移しやすい臓器:骨、肺、肝臓、脳など
標準治療方法:化学療法・全身化学療法(抗がん剤)・免疫療法

治療スケジュール

手術

手術は大きく分けて、乳房を残す「乳房部分切除術」と乳房を全部切除する「乳房切除術」とがあります。

1)乳房部分切除術

腫瘍から1~2cm離れたところで乳房を部分的に切除します。乳房部分切除術はがんを確実に切除し、患者さんが美容的に満足できる乳房を残すことを目的に行います。乳房部分切除術を受けられる条件については明確なものはなく、がんの大きさや位置、乳房の大きさ、本人の希望などにもよるので、手術を担当する医師とよく相談することが重要です。
しこりが大きい場合は、術前薬物療法によって腫瘍を縮小させてから手術を行います。
手術中では、切除した組織の断端(切り口)のがん細胞の有無を顕微鏡で調べて、確実にがんが切除できていることを確認する必要があります。がんが手術前の予想よりもはるかに広がっている場合は、手術中に乳房を全部切除する乳房切除術に変更するか、もしくは、再手術で乳房切除術を行うこともあります。

通常、手術後に放射線照射を行い、残された乳房の中での再発を防ぎます。

2)乳房切除術

乳がんが広範囲に広がっている場合や複数のしこりが離れた場所に存在する多発性の場合は、最初から乳房を全部切除する乳房切除術を行います。

3)乳房再建術

乳房切除術後に、患者さん自身のおなかや背中などから採取した組織(自家組織)またはシリコンなどの人工物を用いて、新たに乳房をつくることを乳房再建といいます。乳頭を形成することもできます。再建の時期については乳がんの手術と同時に行う場合(一次再建)と、数カ月から数年後に行う場合(二次再建)とがあります。再建手術は主に形成外科医が担当します。従来は自家移植の場合にのみ公的医療保険が適用されていましたが、現在はシリコン・インプラントなどの人工物を使う場合にも、保険の適用が拡大されています。しかし、現在でも、手術の内容や、病院によっては自費診療の場合があります。まずは担当医に再建の希望を伝え、よく相談しましょう。

4)わきの下のリンパ節郭清(腋窩リンパ節郭清)

がん細胞はリンパ液の流れに乗って、周辺のリンパ節に入り込む、転移を起こすことが知られています。しかし、現在の手術前の検査ではリンパ節にがんが転移しているかどうかは正確にはわかりません。そこで、乳がんの手術では、リンパ節切除を行い、転移の有無を調べてきました。リンパ節切除を行うと、手術のあとに、腕が上がりにくい、しびれる、むくみといった症状が起こることがあります。このため、今日では手術前にリンパ節転移が明らかな場合にのみ、わきの下のリンパ節切除が行われます。
手術前にリンパ節転移が明らかでない場合には、センチネル(見張り)リンパ節生検が行われます。

※センチネルリンパ節生検について
乳がんの手術は、治療の範囲が乳腺とわきの下の周囲に限られているので、内臓の機能(呼吸や消化、排泄など)への影響はあまりなく、麻酔による影響からの回復や痛みの調節が落ち着けば、少ない安静期間で起き上がったり、立ち上がったりすることができるようになります。手術当日の夕方にトイレまで歩けることもあります。乳房や胸の筋肉を切除した場合などでは、治療した側の腕の運動をしばらく控え、安静を保つ必要があります。
手術直後には、手術の創(きず)から出る血液や体液などを排出するドレーンという管が体に付けられています。創の状態が安定したら、管を抜きます。抜糸(最近では抜糸を必要としない縫い方や抜糸が不要のテープ、医療用接着剤を使用する病院も多くなってきています)のころには、創そのものからの痛みはかなり治まっています。

放射線治療

放射線治療は、高エネルギーのX線や電子線を体の外から照射して行われます。がん細胞を通過した放射線は、細胞の増殖を阻害し、がんを小さくする効果があります。放射線治療は放射線照射を行った部分だけに効果を発揮する局所療法です。
乳がんでは、乳房部分切除術のあと、温存した乳房やリンパ節での再発の危険性を低くするために、放射線治療が行われることが多くなっています。また、再発した場合に、がんの増殖や骨転移に伴う痛み、脳への転移による神経症状などを改善するために行われることもあります。

放射線を照射する範囲や量は、放射線治療を行う目的、病巣のある場所、病変の広さなどによって選択されます。多くの場合、外来での治療が可能です。
副作用は主に放射線のあたる部位にあらわれます。治療中や治療終了直後に、皮膚が日焼けをしたように赤くなることがあるので、強くこすったり、かいたりしないようにします。皮膚の赤みは治療終了後1週間から2週間でほとんど改善します。治療後に皮膚が熱をもったり、黒ずんだりカサカサになることがありますが、多くは1年から2年で元に戻ります。治療が終了して数カ月以内に遅れて出る副作用として、肺に炎症が起こることがあります。咳(せき)や微熱が続くときは担当医に伝えるようにしましょう。

薬物療法

薬物療法には、「手術や他の治療を行ったあとにその効果を補う」「手術の前にがんを小さくする」「根治目的の手術が困難な進行がんや再発に対して、延命および生活の質を向上させる」などの目的があり、病期(ステージ)、リスクなどに応じて行われます。

1)内分泌(ホルモン)療法

卵巣機能が活発な女性では、主に卵巣から女性ホルモンが分泌(ぶんぴ)されています。50歳前後で閉経を迎えたあとの女性では、卵巣からの女性ホルモンの分泌は停止し、そのかわりに副腎皮質から分泌される男性ホルモンを原料として、「アロマターゼ」と呼ばれる酵素の働きによって女性ホルモンがわずかに産生されます。閉経後の女性では閉経前に比べ、女性ホルモンが1/100程度に減少します。

乳がんは「ホルモン受容体」(エストロゲン受容体[ER]とプロゲステロン受容体[PgR])のあるものとないものに分けることができます。ホルモン受容体陽性というときには、(1)エストロゲン受容体陽性/プロゲステロン受容体陽性、(2)エストロゲン受容体陽性/プロゲステロン受容体陰性、(3)エストロゲン受容体陰性/プロゲステロン受容体陽性の3つの組み合わせがあります。

手術後に、ホルモン受容体のある乳がんかどうか、がんの組織を詳しく調べます。「ホルモン受容体」のある乳がんでは、女性ホルモンががんの増殖に影響しているとされています。内分泌(ホルモン)療法は女性ホルモンの分泌や働きを妨げることによって乳がんの増殖を抑える治療法で、ホルモン受容体のある乳がんであれば効果が期待できます。

内分泌療法には抗エストロゲン剤、選択的アロマターゼ阻害剤、LH-RHアゴニスト(黄体ホルモン放出ホルモン抑制剤)などが使われます。乳がんの術後や転移性乳がんに用いられる抗エストロゲン剤は、女性ホルモンのエストロゲン受容体への結合を阻害します。選択的アロマターゼ阻害剤の作用機序(薬理学の用語で、薬物が生体に作用する仕組み)は、閉経後の女性に対してアロマターゼの働きを抑え、女性ホルモンの産生を抑えます。閉経前の女性の場合は、卵巣からの女性ホルモンの分泌を抑えるLH-RHアゴニスト(黄体ホルモン放出ホルモン抑制剤)を併用することがあります。その他にも、プロゲステロン製剤などを使用する場合もあります。

治療の目的や使う薬の種類によって治療期間や効果の目安は変わりますが、手術後に行う場合は5年間から10年間の投与が目安となります。

副作用については、化学療法に比べて軽いといわれていますが、顔面の紅潮やほてり、のぼせ、発汗、動悸(どうき)などの更年期障害のような症状が出る場合もあります。これらの症状の多くは治療を開始して数カ月から数年後には治まりますが、症状によっては使用するホルモン剤の種類を変更したり、症状を和らげる薬を投与したりすることもあります。また薬剤によっては高脂血症、血栓症、骨粗しょう症のリスクが高まることが知られているので、そのようなリスクを少なくするための治療を併用することもあります。

2)化学療法

がん細胞は、正常細胞と違い、限なく増殖し続けるという性質があります。化学療法は抗がん剤(殺細胞性抗がん剤)により、細胞増殖を制御しているDNAに作用したり、がん細胞の分裂を阻害したりすることで、がん細胞の増殖を抑えます。

(1)術前化学療法
手術を行うことが困難な場合や、しこりが大きいために乳房部分切除術ができない場合には、3カ月から半年ほどの化学療法を行い、腫瘍を縮小させてから手術を行う方法があります。これを術前化学療法といいます。この方法によって、手術や乳房部分切除術を受けられる人が増えています。術前化学療法で腫瘍が十分に縮小しない場合は、乳房切除術を行ったり、必要に応じて放射線治療や内分泌(ホルモン)療法を追加したりすることもあります。

(2)術後化学療法
早期の乳がんでは、多くの場合、転移・再発を防ぐ目的で、手術後に化学療法を行います。手術後に化学療法を行う目的は、どこかに潜んでいる微小転移を死滅させることです。手術後の化学療法によって、再発率、死亡率が低下することが報告されています。作用が異なる複数の抗がん剤を使用することによって、がん細胞をより効果的に攻撃できることが明らかになったことから、術後化学療法においては複数の抗がん剤を組み合わせて使用します。

(3)主な副作用
化学療法は正常な体にとっても毒であるため、各副作用があります。最近は化学療法の副作用に対する予防法や対策が進歩していることもあり、外来通院しながら治療を受けることが多くなっています。特に髪の毛、口や消化管などの粘膜、あるいは血球をつくる骨髄など新陳代謝の盛んな細胞が影響を受けやすく、脱毛、口内炎、下痢が起こったり、白血球や血小板の数が少なくなったりすることがあります。その他、全身のだるさ、吐き気、手足のしびれや感覚の低下、筋肉痛や関節痛、皮膚や爪の変化、肝臓の機能異常などが出ることもあります。

3)分子標的治療

がん細胞は、通常、正常細胞とは異なる遺伝子(DNA)を多く持っています。例えば、これらの遺伝子の変異は、細胞が非常に速く成長し、分裂を頻繁に繰返し、制御不能なる可能性があり、これらのタイプの変異は、正常細胞をがん化させるものが多く存在します。
しかし、さまざまな種類のがんがあり、すべてのがん細胞が同じではありません。
対象となる薬物は、がん細胞を異なるものに変化する一部をゼロにする特定の領域を標的とし、それを攻撃するために開発された多くの薬物には、多くの異なる標的領域があります。

対象となる薬剤の目的は?

  • がん細胞が成長し分裂するように指示する化学信号を遮断するか、または止める
  • がん細胞が死ぬように細胞内のタンパク質を変更する
  • がん細胞を養うために新しい血管を作るのを止める
  • がん細胞を殺すための免疫機能亢進を誘発する
  • 正常細胞に影響を与えず、がん細胞へ毒素を運んで殺す

トラスツズマブ(ハーセプチン)
いくつかの乳がんは、乳がん細胞の増殖および生存を助けるヒト上皮成長因子受容体2(HER2)と呼ばれるタンパク質を過剰量生成します。乳がん細胞がHER2を過剰に作ると、トラスツズマブはそのタンパク質をブロックし、がん細胞を死に至らせるのに役立ちます。副作用には、頭痛、下痢、心臓疾患などがあります。

ペルツズマブ(Perjeta)
ペルツズマブはHER2を標的とし、トラスツズマブおよび化学療法と組み合わせて転移性乳がんでの使用され、この治療法の組み合わせは、がんのための他の薬物療法をまだ受けていない女性のために準備されています。ペルツズマブの副作用には、下痢、脱毛および心臓疾患などがあります。

Ado-trastuzumab(Kadcyla)
この薬剤は、トラスツズマブと細胞殺傷薬とを組み合わせたものである。併用薬物が体内に入ると、トラスツズマブはHER2に引き寄せられるため、がん細胞を見つけるのに役立ちます。次いで、細胞死滅薬物が細胞に放出される。Ado-trastuzumabは転移性乳がんの患者にとって、既にトラスツズマブと化学療法を試みてきた選択肢となります。

ラパチニブ(Tykerb)
ラパチニブはHER2を標的とし、進行性または転移性の乳がんでの使用され、ラパチニブは、化学療法またはホルモン療法と併用することができます。潜在的な副作用には、下痢、痛みを伴う手足、悪心、および心臓疾患があります。

Palbociclib(Ibrance)
進行ホルモン受容体陽性乳がんの女性において、アロマターゼ阻害剤と共にパルボシクリブを使用します。副作用としては、感染症、倦怠感および悪心のリスク増加が挙げられます。

エベロリムス(Afinitor)
エベロリムスは、がん細胞の増殖に役割を果たす経路を標的にします。進行性乳がんの女性では、エキセメスタンと併用されています。副作用には、口の痛み、感染の危険性の増加、発疹および肺、呼吸系疾患があります。

体温連動型 全身温熱療法の活用方法

がんの告知を受けた患者様、再発と診断された患者様、また治療中の患者様から、それぞれのステージに応じて様々な不安やお悩みが寄せられ、治療に対するお問い合わせをいただきます。

0期
  • 何もしないのは不安
  • 家族にがん患者がいて心配
  • 白血球を増やして免疫を上げたい
Ⅰ期
  • 手術前に体力をつけたい・傷の治りを早くしたい
  • 免疫を上げたい・再発を予防したい
Ⅱ期
  • 手術前に体力をつけたい・傷の治りを早くしたい
  • 免疫低下が心配・転移や再発が不安
  • 抗がん剤の副作用がある
Ⅲ期
  • 抗がん剤や放射線の副作用が強い
  • 体力や免疫が低下して、治療が続けられるか不安
  • 遠隔転移が心配
Ⅳ期
  • 抗がん剤が効かなくなってきた
  • 治療の副作用が心配・痛みが強い
  • QOLを向上させたい

体温連動型 全身温熱療法は、全てのステージの患者様の不安やお悩みにお応えし、治療のサポートに努めます。

0期
  • 免疫機能の賦活
  • がん抑制遺伝子の正常化
Ⅰ期
  • 免疫機能の賦活
  • 手術後の感染を予防し、創傷治癒を早める
  • 再発予防
Ⅱ期
  • 免疫機能の賦活
  • 手術後の感染を予防し、創傷治癒を早める
  • 再発予防
Ⅲ期
  • 免疫機能の賦活
  • 抗がん剤副作用軽減
  • 抗がん剤の運搬・作用補完
  • 分子標的治療薬の作用補完
Ⅳ期
  • 免疫機能の賦活
  • 抗がん剤副作用軽減
  • 抗がん剤の作用補完
  • 分子標的治療薬の作用補完
  • 食欲や睡眠の改善
  • 痛みの緩和

温熱療法と食事療法の併用

根本的ながんの治療には生活習慣の改善がなにより重要です。生活習慣の改善は、どんな患者さんでもどの段階からでも始められる治療法の一つです。
「からだをあたためる」ことに加え、「食生活を見直す」ことも、がんに負けない体づくりの一環です。がんの成長には多くの糖分を必要とするため、第一に糖分を控えることが重要です。また、がんはその周囲を酸性に保つことで自身を防御しますが、糖分を使ったエネルギー合成によりがん細胞の中で産生される酸を、細胞外のナトリウムと入れ換えることで排出するため、塩分を控えることも重要です。
糖分や塩分を控えた献立の工夫や、酸性に傾いた体をアルカリ性に保つ工夫を、医師の指導と定期的なチェックで実践して頂くことができます。
食生活の改善は、がんが育ちにくい体をつくるとともに、動脈硬化の予防や改善にもプラスの作用をもたらし、温熱療法時の血流アップを助けるため、結果的に温熱療法の作用を高める効果も期待されます。