転移性乳がんにも免疫療法が成果を上げましたの紹介ページです。斎藤院長コラムを掲載しています。

 

更新日:2018.07.20

転移性乳がんにも免疫療法が成果を上げました

転移性乳がん患者の免疫系のコントロールによって、乳がん細胞を完全に排除できたという報告がありました。この手法は、従来のあらゆる治療法が効かない末期の乳がん患者にとって一つの選択肢になる可能性があります。サーモセルクリニック院長の斎藤糧三です。

がんの免疫療法の手法として臨床で最も効果が上がっているのは、「免疫チェックポイント阻害剤」と「T細胞の養子免疫療法」であるといわれています。
前者は、免疫寛容を誘導する分子に対する抗体を注射することによって患者の体内でT細胞を活性化させます。後者は、患者の血液や腫瘍からT細胞を採取し、その腫瘍を認識するT細胞だけを培養して患者の体内に戻します。これらの方法の有効性はがんの種類によってかなりばらつきがあり、これまでに免疫チェックポイント阻害剤を利用した乳がん治療の臨床試験が何回か行われてきましたが、効果がないことが判明していました。

Steven Rosenberg氏は、数種類の既存の治療を実施したものの成果が上がらず進行した1人の転移性乳がん患者から、がん特異的T細胞を分離し再活性化、免疫チェックポイント阻害剤を併用すると、再活性化T細胞によって患者の転移病変が全て排除され、患者はそれ以来現在までの2年間、がんの再発はみられないとのことです。研究者たちは標的となったがん細胞の特性を分子レベルで詳しく調べ、これによって今回の手法が他の乳がん患者でも有用かどうかを高い精度で予測可能としています。ただし、この研究結果確定については、治験者を増やした比較臨床試験での確認が必要であることはいうまでもありません。

引用:Zacharakis N. et al., Immune recognition of somatic mutations leading to complete durable regression in metastatic breast cancer. Nat Med. 2018, Vol 24, No. 6: 724-730